その対策は、課題の本質を見ていますか?

ある企業の人事担当の方から、こんなご相談をいただきました。

「最近、若手社員の離職が続いていて…。コミュニケーション研修をお願いできますか?」

よくあるご依頼です。そして、同じようなお悩みを抱える企業様は少なくありません。
ですが私は、まずそっとこうお尋ねします。

「コミュニケーションが問題だと感じた“きっかけ”は、どんな場面でしたか?」

すると、「最近の若手は報連相が足りない」「チームで話し合いができていない」といった現象面の声が返ってくることが多いのです。

もちろん、現象への対応も必要です。ですが、それは“症状”であって“原因”ではないかもしれません。
いま起きていることの“見えている部分”だけに対策を打っても、同じような課題は形を変えてまた現れます。

私たちが大切にしているのは、「その課題の奥にある、本当の要因は何か?」をともに見つめることです。
もしかすると、報連相の背景には、「話しかけにくい上司の雰囲気」や「指示が曖昧な業務設計」があるかもしれません。
チームで話し合いができないのは、「言っても変わらない」「決まったことが変わる」という職場文化の影響かもしれません。

それらを見ずに「とりあえず研修を」となると、せっかくの時間と費用が、“問題の皮膚を撫でるだけ”で終わってしまいます。
もちろん、外形的には「研修をやった」という事実は残ります。
報告書も出ますし、アンケートで「わかりやすかった」という声も並びます。

それでも、「根本的に何も変わっていない」という空気を、きっと多くの方が感じてしまうのではないでしょうか。

だからこそ私たちは、「すぐに研修をしましょう」とは申し上げません。
むしろ、研修をやらない選択肢があるなら、それも含めて一緒に考えたいのです。

本質を見つめてこそ、意味のある対策が生まれます。
的を射た問いこそが、変化の扉を開きます。

私たちは、課題の奥にある“真の問い”に寄り添うことからはじめます。
それが、クライアントの皆さまに対してできる、いちばんの誠実さだと信じているからです。

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