研修で人は変わる?

企業の皆さまから、「社員を変えたい」「管理職の意識を変えたい」というご相談をよくいただきます。そして、次に続くのはこうしたお言葉です。

「とりあえず、研修をお願いしたいのですが…」

この「とりあえず」という言葉には、私自身、少しだけ複雑な気持ちになります。

もちろん、研修そのものを否定するわけではありません。実際、当社でも多くの研修を実施し、現場に寄り添った学びの場づくりに力を注いでおります。ただ、研修という手段だけで「人が変わる」と信じきってしまうのは、少しもったいないと感じてしまうのです。

なぜなら、研修は「変化のきっかけ」であって、「変化そのもの」ではないからです。

たとえば、どんなに素晴らしいセミナーを受けても、翌日から会社に戻れば、席の配置も、上司の言葉も、目の前の業務のルールも変わっていなければ、人はなかなか動き出せません。ましてや、長年の習慣や組織の文化が根強く残る中では、学んだことを活かす場面すらないこともあります。

ですからもし、「せっかく予算も時間も割くなら、確実な研修を」ということであれば、実績豊富な大手研修会社にご依頼されるのが、最も安心で手堅い選択かもしれません。安心感、資料の厚み、終了後の「やった感」はしっかり得られます。

…ただ、それで本当に、職場が変わるでしょうか?

私たちは、行動変容をゴールとする企業様には、あえてこう申し上げています。

「まず、研修の前に『変えやすい環境』を整えませんか?」

仕組みが変わらなければ、人は変われません。ルールが曖昧なままでは、勇気を出して動いた人が損をするかもしれません。そんな土壌で、研修の力だけで人が育つと考えるのは、植物の根を見ずに葉っぱだけを育てようとするようなものです。

行動変容とは、仕組み×学び×伴走の掛け算です。
私たちはそのすべてに関わりながら、誠心誠意、ともに未来をつくっていくことを大切にしています。

「人を変える研修」ではなく、「人が動きたくなる職場を一緒に育てる」こと。
そのお手伝いが、私たちの仕事です。

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